造影CT像からの大動脈血管構造の自動抽出

大動脈瘤をはじめとする大動脈疾患は動脈硬化等の原因により発生する重篤な疾患である. これまで大動脈疾患の治療には開胸・開腹による外科的手術が行われてきた.しかし近年のインターベンショナル・ラジオロジーの進歩に伴い, より低侵襲な治療法として動脈血管切開部よりカテーテルを通じてデバイス(人工血管・バルーン等)を病変部に挿入・留置する手法が用いられるようになってきた.このようなインターベンション術では術前に適応症例であるか診断したり,留置すべきデバイスを設計する必要がある.そのためには血管の走行方向,断面積や距離計測,狭窄の有無といった病変部や留置経路にあたる血管の3次元的な形状を正確かつ簡便に計測することが必要となる.

本研究ではヘリカルCT像から大動脈血管構造を病変部も含めて抽出する方法について検討した.具体的には3次元のエッジ保存型平滑化フィルタや領域拡張法を用いて大動脈の血流部を抽出し,細線化によって仮中心軸を設定した後,MPR像上の血流部の直径に基づき瘤部を判定する.更に瘤部については中心軸を再設定する.これにより大動脈瘤を含んだ大動脈血管の3次元形状を求める. また血流領域の境界より血栓・石灰化等の病変部の抽出を行う.臨床例6例に対する適用結果から血管形状の取得に有効であることが確められた. 提案手法により,血管や病変部の形状パラメータを定量的に計測することが可能になるので, 例えばステントグラフト留置術の術前計画や術後評価に有用であると期待できる.

[3Dmodel]
図1. 抽出された腹部大動脈の3次元モデル
(赤:血流領域,白:血栓領域)

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図2. 計測された腹部大動脈の血管形状パラメータ

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