ニューラルネットワークを用いたX線CT像からの臓器抽出

背景

X線CT(Computed Tomography)やMRI(Magnetic Resonance Imaging)に代表される生体断層画像はそれ自身疾病の診断に大きな役割を果たすものであるが、 これらの画像から各器官や疾病部位の部分画像を抽出することにより、 新たな応用技術を展開することができる。しかし、生体断層像から臓器を自動的に抽出する手法はいまだ確立していない。そのため、臨床の場では主に人間が手動により断層像から臓器を切り出していることが多い。 その作業は膨大な時間および労力が必要となるので、 断層像から任意の部分を自動的に抽出するシステムの開発が期待されている。

目的

本研究の目的はX線CT像から複数の主要な臓器を自動抽出することである。 本研究 上で対象とする画像はヘリカルCTで撮影されたもので、 腹部X線CT像の中でも主 に肝臓が撮影されている画像とする。 対象とする臓器は肝臓をはじめとした実質 臓器であるが、 大動脈や大静脈、脊椎といったCTに投影されている各部位も対象 とする。

教師画像の作成

  • 原画像を各臓器(カテゴリ)ごとに色分けする。
  • 読影経験豊富な放射線技師の指導のもと、用手法的に行う。

学習データの作成

学習データは

  • 画像中の各画素に対する特徴量
  • 教師画像から得られる各画素ごとの教師信号
からなる。特徴量には以下に挙げるものを用いる。

  • 注目画素の濃度値
  • 注目画素周辺の濃淡ヒストグラムを用いた特徴量
    • 平均
    • コントラスト
    • 標準偏差
    • 歪度
  • 位置情報を用いた特徴量
    • 基準点を原点とした相対座標

ニューラルネットワークを用いた臓器抽出

学習時には用いなかったX線CT像から臓器を抽出する実験を以下の手順で行った。

  1. テンプレートマッチングを用いて脊椎の一部を検出し、実験画像における相対座標の基準点を算出する。
  2. 学習時と同様の特徴量を実験画像中の各画素について計算し、実験データを作成する。
  3. 実験画像のスライス位置に対応するニューラルネットワークに実験データを入力する。
  4. ニューラルネットワークの出力結果に対して縮小・拡大演算を行い、孤立小領域の除去、輪郭部分の処理を行う。

実験画像例(図左)、ニューラルネットワークの出力例(図中央)、後処理結果例(図右)

臓器の抽出結果

1:肝臓 2:大動脈 3:大静脈 4:脊椎 5:脾臓 6:膵臓

実験画像1(肝臓上部)

抽出結果1

実験画像2(肝臓中部)

抽出結果2

実験画像3(肝臓下部)

抽出結果3


 

Copyright © 2004 Eiho Laboratory.